【開封・レビュー】スマートフォンの在り方を問いかける光のアート。Nothing phone(1)
2022年7月13日に発売されたNothing初のスマホ「Phone(1)」をレビューします。
背面のガラス越しに中身が見えるスケルトン仕様で、Glyphライトと呼ばれるライン照明を搭載した前衛的なデザインが特徴。
[主なスペック]
Snapdragon 778G+、8GB+256GB、5000万画素2眼メインカメラ、120Hz駆動FHD+ OLEDディスプレイ、4500mAhバッテリー
価格:69800円
輸送梱包
100人限定の先行購入枠で発売日の7/13に注文し7/16に到着。日本国内から出荷されました。
購入先はNothing公式サイト。先行購入者向けのTシャツとレターが同梱されています。
個装箱
厚さ1.7cmの薄型の箱。
赤いタブを引っ張って破って開封します。
側面から本体とアクセサリーボックスを取り出す珍しい構造。
箱は全て紙製で再生繊維を使用しています。
モデル名:A063
今回購入したのはホワイト、8GB+256GB。
技適マークの印字あり。
環境配慮型保護シート
輸送用の保護シートは植物由来のプラスチック素材PLA樹脂を使用。
小さく「Biodegradable under composting conditions=堆肥化条件下で生分解性を持ちます」と書かれている通り、堆肥などの微生物が存在する場所において水とCO2に分解される素材です。
焼却しても発生するCO2は石油系素材の1/2程度。原料となる植物が成長過程で気中から取り込んだCO2と相殺されることからCO2排出量を削減(=カーボンニュートラル)することができます。
本体
フラットタイプのディスプレイ。最初から保護フィルムが貼られています。
ガラスはGorilla Glass 5を使用。
背面もGorilla Glass 5のフラットガラス。
ガラスの透明度が高いため中身がそのまま解放されているようにも見えます。
立体感のある背面
中の構造体は凹凸が大きく作られていて立体感のある造形が美しい陰影を作り出します。
影が落ちて浮遊感のあるロゴ。
スピン加工され、見られることを意識した装飾性の高いネジ。
すぐ横には金属製のパンチングメタルも。
Nothingフォントで書かれた印字が綺麗に溶け込みます。
同じ白色のパーツでも各部品の色と表面の仕上げを微妙に変えることで単調にならずリズム感が生まれています。
ただし言われているほど中身が丸見えだというわけではなく、ガラス越しに見えている部品の多くはカバー部材、いわゆる見せ部品で、スマホを構成する真の部品はさらに奥に隠されているのでは、と推測します。
構成
ディスプレイガラスと背面ガラスで金属フレームを挟む構造。
このフレームは100%再生材のアルミを使用しています。
ファンクション
天面部にサブマイク。
底面部にカードスロット、マイク、Type-Cコネクタ、Bottomスピーカー。
イヤホンジャック、Felicaは非対応。NFCは使えます。
サイドキー
サイドキーは金属製でカチッとしたクリック感。がたつきも無く高い精度を感じさせます。
ボリュームキーが本体の左側、電源キーが右側にあるiPhoneと同じ配置となっています。
カードスロット
裏表に1枚ずつnanoSIMカードを取り付けるタイプのデュアルSIM対応カードトレイ。SDカードは非対応。
防水等級はIP53の非防水ですがゴムパッキンが付いています。
リアカメラ
5000万画素のメインカメラ、5000万画素の広角カメラの2眼構成。フラッシュは1灯。
広角カメラの横に2つ目のサブマイク。
レンズ部分だけが飛び出したシンプルな構造。
最近のモデルで多くみられるカメラを主張する広範囲の飛び出しはありません。
重さ
重さは実測で196g。
ポケットに入れているとはっきりと存在感を感じる重量です。
厚さ
本体部分の厚さはメーカー公称8.3mmに対して実測で約8.47mm。
カメラ部分の厚さは9.86mm=カメラの出っ張り量は約1.39mm。
アクセサリーボックス
紙製のアクセサリーボックス。なぜかYoutuber等のレビュアーが紹介しているものと形状が異なります。
付属品
安全と保証に関するドキュメント、SIM取り出し用のピン、USBケーブルが付属。
SIM取り出しピン
持ち手が透明の樹脂素材で作られていて扱いやすいSIMピン。
SIMピンにまでデザインが行き届いています。
USBケーブル
USBケーブルはType-C to C。長さは1m。太さは直径3.3mm。
AppleのUSB-C充電ケーブルにそっくりなデザイン。
保護ケース
別売の保護ケースも本体同様にタブを引っ張って開けるタイプ。
デザインを本体と合わせて世界観を統一しています。
保護ケースは硬質プラスチックと柔軟性のあるTPUのハイブリッド製。
背面部分が硬く、側面部分が柔らかくなっていて付け外しは楽々。
ケースの装着状態のサイズは幅79mm、長さ162mm、厚さ11.25mm(縁を含む)。重さは224g。
ケース自体の厚みは背面部1.5mm、側面部1.2~1.3mm、重さは28g。
厚手で安心感がある反面、片手持ちが難しいサイズ感になってしまいます。
カメラの出っ張りがケースの厚みの中に収まって背面は完全にフラットになります。
純正ケースはクリアとブラックの2色が用意されています。
ホワイトの本体にブラックのケースを付けてもカッコイイ仕上がりになるかと思います。
電源ON
日本語も違和感なく表示。
初期設定では実機の画像でSIMカード挿入口の位置を示す分かりやすいUIも。
Androidバージョンは12。Nothing OSバージョンは1.0.1。各国の規格に準拠すると共に技適も取得済み。
ディスプレイ画質
ディスプレイは2400×1080ピクセル(FHD+)のOLED。RGB配列はダイヤモンドペンタイル配列。
リフレッシュレートは60Hz、120Hzを選択することが可能。
120Hzに設定していても動画再生時など、ゆっくりした動きがあるものを表示する時にコマ落ちのような残像感が出る時があります。
色合いはやや黄色っぽく暖色寄り。発色はニュートラル傾向でやや淡白な色使いに感じます。
ベゼルはやや太めながら4辺が均一で見た目のバランスが良く、引き締まって見えます。
指紋センサー
指紋センサーは画面内のインディスプレイセンサータイプ。
認証は高速で快適。
イヤースピーカー
VoLTEで相手から聞こえる音声品質は可も不可も無く、通常の会話で気になる部分はあまりありません。
一方、Google chatなどVoIPでの音声品質は高音強めのチューニング。サ行が耳に刺さるシャカシャカした音質で長時間の通話では聴き疲れそうな音質。
サウンド
イヤースピーカーをスピーカーと兼用するデュアルスピーカー仕様。
端末の左右が入れ替わるとそれに追従してLRが反転するランドスケープには非対応。
右(Bottom)側の音量が若干大きく右寄りに聞こえます。
音質は中高音寄り。もう少し音の重さが欲しいところ。
Glyph Interface – 背面LED
このモデルの目玉ともいえる背面のLED発光。
不規則な配置が違和感なく受け入れられるのは精密に考えられたデザインの妙といえます。
明瞭で正確に制御された灯りを見た人の多くが目の前で奇怪な出来事が起きたような、そんな反応を引き起こすことでしょう。
より暗い環境では構造体が浮かび上がるような印象に。
光源の周囲の無数の凹凸が光の減衰を規則的に整列し、その様をより美しく見せます。
明るい場所とは違う表情を見せ、どんな環境においてもこのモデルだけのアートを楽しむことができます。
カメラの周囲はCの字状の発光。
なぜこんなに綺麗に光るのか
他のどのスマートフォンにも用いられていない直下型バックライト構造の高密度LEDモジュールがムラの無い光の演出を支えています。分解記事で詳しく解説しています。
着信
レトロで軽快な着信音に合わせてLEDが発光。
開発者はこの音について「1980年代の製品の圧電スピーカーのようなスパイキーで電子的な音」と表現しています。
タリーライト
右上の赤いドットは動画撮影時に点滅して録画中であることを知らせてくれます。
この機能は任意でON/OFFを切り替え可能。
リバースチャージ
リバースチャージ機能でバッテリーを共有し、ワイヤレス充電に対応するスマホやイヤホンなどを充電することができます。
LEDは相手デバイスを検出した時にのみ発光。常時点灯ではありません。
フロントカメラ
フロントカメラはソニー製IMX471で1600万画素。ピンホール型でステータスバーの幅は約8.5mm。
カメラの外形に対してステータスバーが太い分、表示領域が狭くなります。
フロントカメラは標準で3456×4608ピクセルの解像度で撮影されます。
リアカメラ作例
標準モードでのフルオート撮影。
標準モードは5000万画素のメインカメラモジュールを使用し、1300万画素(4096×3072ピクセル)で撮影されます。
標準モードと広角モードの比較。
広角モードは5000万画素の広角カメラモジュールを使用し、1300万画素(4080×3072ピクセル)で撮影されます。
マクロモードでは広角カメラモジュールを使用。被写体まで4cmくらいまで寄って撮影可能。
光学手ブレ補正により暗い環境での手持ち撮影でもブレません。
5000万画素モードでは8192×6144ピクセルで撮影されます。この画像で元のファイルサイズは18.5MB。
木にかけられたプレートの文字は潰れて判読不可の部分もあり、他の高解像度カメラ搭載モデルに比べるとぼやけが目立ちます。
充電速度
充電器を接続すると背面LEDが充電開始をお知らせ。
Glyphインターフェース設定の「充電メーター」をONにすると電池残量をLEDの長さで確認できるようになります。
※この設定はOSを1.1.0にアップデートすることで使用可能
市販の充電器を使ってスリープ状態で5%から満充電までにかかる時間を測定。
・有線充電:Anker PowerPort Atom III (TypeC 最大45W)…70分
・ワイヤレス充電:Anker PowerPort Atom III + Anker PowerPad Alloy (最大15W)…110分
・Type Cケーブル:純正付属品
講評
過剰に盛り上がり過ぎたスマホを冷静に俯瞰するような独特の落ち着きを放つ芸術作品のようなスマートフォン。
大げさなデザイン、数字上のスペック競争に夢中になるのではなく、モバイルデバイスに期待されるものを模索するような、そういった原点を再考することを促されるようなメッセージ性を感じる製品です。
ハードウェアの出来栄えはなかなか良く、隅々まで作り込まれていてカチッとした精度感を感じ取ることができます。
ソフトは最低限のカスタマイズ。その分操作性やスピーカー音質など普段使いで物足りなさを感じる場面があります。
他にはない唯一のデザインに価値を見出すことができれば69800円という価格も妥当な線かもしれません。
また、100%の再生アルミ、植物由来の樹脂フィルム等の導入にコストをかける姿勢も非常に刺激的。ユーザーのエコ意識の向上にも貢献していくものと考えられます。
より多くのメーカーがこれに共鳴し、環境負荷低減における技術競争が一層促進されることを願ってやみません。
最高の端末が最高の環境技術で作られているとなれば、それはとてもカッコイイことだと思います。
分解記事はこちら。
ディスカッション
コメント一覧
詳細なレビューありがとうございます。スマホの進化もロマンの領域でこれからは、利便性やデザイン性で選ばれると思うとワクワクが止まりません。変な興奮を覚えてしまうほどのシロモノですね。