【レビュー】折り畳みスマホの低価格化に挑戦する世界初液体レンズ搭載Xiaomi「Mi MIX FOLD」

2021年4月に中国国内向けに発売されたXiaomi初の折り畳みスマホ「Mi MIX FOLD」。
8.01インチのOLEDディスプレイ、スマホ史上初の液体レンズを搭載した1億800万画素のメインカメラ、自社開発の画像処理チップ、Snapdragon888、12GBメモリに5020mAhバッテリー+67W急速充電とこれでもかと機能を詰め込んだハイスペックスマホです。
今回レビューするのは12GB/256GBバイトで9999元(約169000円)のモデルです。

豪華な箱と開封の様子は前回の記事にて。

背面

背面パネルはガラス製。
真っ黒ではなく薄く黄色みがかっていてガンメタリックな雰囲気。とても綺麗な光沢です。
開いた状態でのサイズは、縦:173.5mm、幅:133mm、厚さ:7.82mm。

多くの部品が使われた複雑な構成。

メインディスプレイ

メインディスプレイ面。

折り目が目立ちます。映り込む物が大きく歪んでいます。
表面は爪で押すと痕が残るような柔らかい素材。細かい凹凸が感じられ、ガラスパネルのようなスッキリとした感じではありません。

よく見ると折り目だけでなく薄く黒い帯が確認できます。

周囲のベゼルはディスプレイ面より一段高くなっていてディスプレイ面を保護する役割があります。
この段差部分に汚れが溜まりやすく掃除しにくいのが難点。

ベゼル部分に埋め込まれた照度センサー。

閉じた時に反対面の受けになるゴム製の突起。

ヒンジ部

特徴的なT字状の金属部品が2つ。SAMSUNGの折り畳みスマホGALAXY Foldにも同様の部品があります。

黒い保護テープの浮きを抑えると同時にディスプレイモジュールの端面を保護するためのものと考えられます。

開閉動作中もディスプレイ端面をしっかりと覆っています。
そして2つのユニットの間からヒンジが徐々に顔を覗かせます。

2枚のユニットに隠れていたヒンジが露出。
どの部品も綺麗に丸められていて指を挟んで怪我をするようなことはありません。
安全を考慮して上手く作られています。

完全に閉じると目にすることができる「INNOVATION FOR EVERYONE」の文字。
無機質になりがちな構造部に上手くデザイン性を取り入れています。

閉じた時は平行にはならず傾斜がついています。

開閉位置によってバネのような力でサポートが働きます。
ストップ位置にクリックがあり、これを乗り越えない限り中間位置に戻ろうとします。また、ストップ位置で固定することはできません。
ストップ位置のクリックが固いため片手で開くのは困難。縦開きのフィーチャーフォンのようにこのクリックを乗り越えるほどの勢いをつけて開くこともできなくはないものの、本体のホールドが難しく実用的ではありません。
よって開閉は両手で行うことになります。

ヒンジはバタフライ状の板金ユニットで構成され、ディスプレイに負荷をかけないように非常に複雑な開閉動作をしていることが分解によって判明しています。

閉じ状態

閉じた状態でのサイズは縦:173.5mm、幅:69.6mm、厚さ:17.3mm。
厚さは一般的なスマホ2台分くらいになります。

ファンクション

底面部にメインマイク、Type-Cコネクタ、2つのスピーカー。
天面部に赤外線ポート、サブマイク、2つのスピーカー。harman/kardonのロゴが刻印されています。

レシーバーは外側のディスプレイ上部に僅かに空いた隙間の部分。
この隙間は幅約0.2mmと非常に細く存在感を感じさせません。

側面に電源キー一体の指紋センサー、Volキー、カードスロットがあります。
指紋センサーは側面の形状に沿うように表面が僅かに湾曲しています。

カードスロット

nanoSIMカードを2枚取り付けられるデュアルタイプ。SDカードは非対応。
FACE TO MAIN SCREENとの記載から、内側のディスプレイがメインのディスプレイと位置付けられていることが分かります。

リアカメラ

世界初の液体レンズにより1つのレンズでズームとマクロの共用を実現。
これにより3つのカメラで4つのレンズの性能を持たせることに成功しています。
それにしても焦点が最も望遠になるズームと、最も近接になるマクロを同じレンズで撮影できるという強烈に違和感のある構成。

カメラの飛び出し量は2.1mm。
側面に小さな穴が空いています。防水モデルではないため気圧調整穴とは考えにくく、マイクへ通じる穴かもしれません。

磁性

フレーム部分に磁石が仕込まれているようで、色んな所に金属が吸着します。
背面、側面も同様にかなり強力な磁力があります。
注意書きにもあった通り磁気式カードなどを近付けないように注意する必要があります。

重さ

重さは実測で318g。
ずっしりと重く、金属の塊を手にしているような感覚です。

電源ON

Android11ベースのMIUI12がプリインストール。

画質

メインディスプレイは2480×1860ピクセル(WQHD+)、4:3比率の8.01インチOLED。RGB配列はダイヤモンド配列。
明るさも十分で角度による暗さや色の変化は少なく、ドルビービジョンHDRに対応します。
しかし残念ながらリフレッシュレートは60Hz固定。スクロール時のカクつきが感じられます。
大画面のためか電池の消耗が激しいのも気になるところ。

画面が表示されるとディスプレイの折り目は正面からで認識しにくくなります。
画面を斜めから見ると折り目が気になります。

スクロール時に表示がうねるように歪む現象があります。ゆっくり動かしている時がより顕著。
どうやら片側のパネル(映像では左側)にのみこの現象が起きるようで、横持ちにしてもこのパネル側だけ遅延が発生します。

サブディスプレイは2640×880ピクセル、3:1比率の超縦長6.52インチOLED。RGB配列はダイヤモンド配列。リフレッシュレートは60Hzと90Hzを選択可能。
こちらも明るく美しいディスプレイです。

晴天の日当たりの良い場所では画面がよく見えず困る場面が多々あります。
これは本体温度の上昇によって端末保護機能が働いて画面の明るさが制限されるためで、特にカメラ撮影をしているとみるみる本体が熱くなり2、3分で明るさが強制的に下げられてしまい、ほとんど画面が見えなくなってしまいます。

マルチウィンドウ

メインディスプレイでは縦画面でも横画面でも横並びの分割になります。
広大な画面を活かして快適にマルチタスキングを実行することができます。

区切り位置は縦持ちでは中央と両寄せの3か所に移動可能。

横持ちでは2か所。片寄せはなぜか右寄せのみ。

サブディスプレイでは縦並びの分割に。
区切り位置の調整はできず中央の一箇所しか選択できません。

ラップトップスタイル

中間位置でノートパソコンのように使うこともできますが重量バランスがカメラ側にあって落ち着きが悪い上、角度が固定されないためヒンジがポヨポヨとして不安定。
GALAXYのFlex Modeのような半開きに最適化されるUIは見当たらず、このポジションで使うことは想定されていないようです。

フロントカメラ

フロントカメラは2000万画素。パンチホールの外形は約4.5mm。
ステータスバーからカメラが少しはみ出しています。

指紋センサー

電源キーと兼用の指紋センサーは非常に高速。キーを押さなくても軽く触れるだけで認証できます。
キーにガタがあるため少し触れただけでカチャカチャと動いてしまうのが気になります。

サウンド

左2か所、右2か所の計4か所から音が出ます。
それぞれ出力する音域が分かれていて左右1か所ずつ低音と高音が出るようになっています。
harman/kardonのチューニング効果なのか厚みがあり聴きやすく豊かな音でスマホとしては突出した音質です。
動画再生時には大画面の迫力と相まって引き込まれるような感覚に陥り、つい夢中になって観入ってしまいます。
気になるのは急激なアタック音でビビリが出る点。ピアノソロのような強弱の明確な曲ではビリビリ音が目立ちます。

カメラ画質

標準モードでのオート撮影。
標準モードは10800万画素のカメラモジュールを使用し、1200万画素(4000×3000ピクセル)で撮影されます。
色に鮮やかさが無く淡白な印象。

光学ズームは液体レンズのカメラモジュールを使用。800万画素(3264×2448ピクセル)で撮影されます。
固体の光学レンズとの明確な差は感じられず特に違和感はありません。

スーパーマクロモードも液体レンズです。
被写体まで4cmくらいまで寄って撮影可能。800万画素の解像度で細かいところまでしっかりと描写されています。
マクロもズームと同様に光学レンズとの差は感じられません。

標準モードと広角モードの比較。
広角撮影は黄色っぽくなる傾向がありました。

10800万画素モードでは12000×9000ピクセルで撮影されます。ファイルサイズは30MB以上にもなります。
等倍表示では木のプレートに書かれた文字のふりがなも確認できますが10800万画素にしては鮮明さがもの足りません。
手振れが起きやすいため手持ち撮影には注意が必要。

標準モードと夜景モードの比較。

充電速度

専用充電器を接続するとMI TURBO CHARGEが起動。

バッテリー容量は5020mAh。
付属の67W充電器を使ってスリープ状態で5%から満充電までにかかる時間は48分。
なんと最初の5分で24%、わずか17分で52%に達するという驚異的なスピード。本体、充電器共に発熱はあるものの危険を感じるほどではありません。
電池の消耗が激しい分を充電のスピードでカバーしたといった感じです。
充電中は充電器からジジジジ…とノイズ音が発生。夜の寝室のような静かな場面では気になる音量です。

講評

ヒンジのメカニカルな動き、画面が曲がる様、液体レンズ、目新しい何もかもがかつてないほどのワクワクを体験させてくれます。

このモデルの最も大きな成果は折り畳みスマホ購入のハードルを下げたことにあります。
2020年11月に発売されたGALAXY Fold2の220000円に対して169000円と約25%も安く価格設定されたことでより多くのユーザーの検討圏内に入るようになりました。

折り畳みスマホには懐疑的な意見が散見されますが実際に手にしてみるとなるほど便利なものだと納得のいくものでした。
ただし一般に定着するには電池持ちや重さなど解決すべき課題が多く、今はまだ発展の途上にあると感じます。

それでも第1作目の完成度としてはさすがXiaomiといったところで、雷軍CEOをはじめとする開発者達の情熱と挑戦によって具現化された素晴らしい製品です。

Mi MIX FOLDの分解記事では液体レンズの動作と複雑なヒンジの動きを解説しています。