【分解】Xiaomiの折り畳みスマホ「Mi MIX FOLD」の内部構造を知る。
Xiaomiの折りたたみスマホ「Mi MIX FOLD」を分解します。
曲がるディスプレイ、折り畳みの構造に着目して内部を検証します。
サブディスプレイ
サブディスプレイは接着剤で固定。
ガラスの厚さは0.6mm。総重量は23g。薄くて軽量なディスプレイモジュールです。
剥がす際にはこのガラスが変形しやすい薄さであること、接着力がかなり強いことを意識して作業する必要があります。
力で剥がそうとするとOLEDに負荷がかかってたちまち破損させてしまいます。
画面の左上部分に近接/環境光センサーがあり、OLEDの透過特性を利用して画面越しに測光しています。
背面ガラス
背面パネルはガラス製で両面テープで固定。
ガラスの厚さは0.6mm。オレンジ色のシートはラミネートされた銅箔テープ。
メインカメラの右下にNFCアンテナ。
大きさの異なる電池が2つ搭載されていることが分かります。
サブフレーム
メイン基板部分をカバーするフレームはカメラパネルと一体。
カメラパネルは削り出しのアルミ製で薄くかなり軽量。
FPCで接続する小型基板にはデュアルフラッシュLED、環境光センサー、サブマイク。
NFCの裏面には基板の熱を放熱する大型の熱拡散シートが貼り付けられています。
サブマイクはカメラパネルの側面にひっそりと空けられた穴から集音する構造になっています。
サブフレームは全部で4個。その内の3個はアンテナパターン付き。
スピーカー
サブフレームと一体化したスピーカーが全部で4個。
容積に比較的ゆとりのあるサブディスプレイ側は特に大型のスピーカーユニットになっています。
サブディスプレイ側の低音が強い理由はここにありました。
全てのスピーカーに熱拡散シートが貼られ、発熱による音質劣化を防ぐ配慮がみられます。
部品レイアウト
バイブは大型スピーカーに押しやられて上の方に配置。マイクは3個。
ケーブル類
5Gモデルということもあり同軸ケーブルは6本と多め。
極太のBtoB FPCは面積の半分以上を2本のラインが占有。
これを電源ラインと仮定すると、高速充電時の67Wの大電力を供給する際の伝送効率の向上、発熱の分散を狙ったものと推測できます。
基板
背面側にメイン基板とサブ基板。
メイン基板は導熱グリスを介してベイパーチャンバーへ熱を逃がしています。
このベイパーチャンバーがバッテリーの方まで伸びていれば高負荷時の激しい発熱をもう少し緩和できたかもしれません。
サブディスプレイ側に中継基板とアンテナ基板。
2枚のディスプレイ、セカンダリバッテリーはこの中継基板を介してメイン基板へ接続されます。
基板の表面。
コネクタの数はなんと21個。Mi 11 Lite 5Gの10個に対して2倍以上のコネクタが使用されています。
その理由は2つの本体を接続する必要があること、ディスプレイとバッテリーが2つずつあること、デバイスを接続するバネ接点端子をコネクタに置き換えていること、などが挙げられます。
裏面。
バイブ/イヤースピーカー/フロントカメラ
大型で重いボディを揺らすためバイブは大きめ。リニアアクチュエータータイプの角型モーターです。
イヤースピーカーはラウドスピーカーとは兼用せず専用デバイスになっています。
フロントカメラのイメージセンサーはSAMUSUNG 3T2 2000万画素 1/3.4インチ。
サイドキー
スイッチのはんだ部分は樹脂コーティングされ、汚れや水分の付着による劣化を軽減させます。
ボリュームキーは外側から差し込みます。
指紋センサーはキートップを外側から滑り込ませ、抜け留めの板金を差し込みます。
赤、白のゴム製の蓋をすることでキーの隙間から侵入した異物や水分が内部に入らないようにしています。
メインカメラ
1億800万画素のメインカメラは金属製のフレームに接着剤で固定されていて外すことはできません。モジュールの大きさは13mm角で高さは7.5mmというさすがの大きさ。
イメージセンサーは下記の通り。
・マクロカメラ/ズームカメラ:OmniVision OV08A10 800万画素 1/4.4インチ
・メインカメラ:SAMSUNG HM2 1億800万画素 1 /1.52インチ
・広角カメラ:OmniVision OV13B10 1300万画素 1/3.06インチ
液体レンズカメラ
レンズに液体を用いることで光学3倍ズームとマクロという真逆の焦点距離を切り替えることのできるモジュール。
サイズは9mm×9mm、高さは8mmで一般的なスマホのカメラに比べると筒の部分が長くなっています。
この筒内の先端付近に液体レンズが閉じ込められています。
マクロモードに切り替える時に液面が動く様子を目視することができます。
液体レンズのフレームをアクチュエーターで前後に移動させることで液面の形状を変化させているように見えます。
バッテリー
バッテリーは引っ張って剥がすタイプの両面テープで固定。簡単に剥がすことができます。
バッテリー1個につき2本のテープが使われています。
どちらか一方のバッテリーを外した状態でも起動することができます。
2つ接続した状態でバッテリー残量表示が22%の時、片方ずつ接続してみると残量表示はそれぞれ4%と18%でした。
計算してみると2つのバッテリーは均等の比率で消費されるわけではなく、いつどちらのバッテリーをどの程度使うかは何らかの条件に基いて独自に制御されているようです。
また、残量表示は片接続でも両接続でも常に総容量5020mAhに対しての残量が表示されています。
左:プライマリバッテリー
・モデル名:BM24
・PSEマーク無し
・容量:2460mAh
・メーカー:Sunwoda Electric
・サイズ:縦65×横49×厚さ4.5mm
・重量:35g
右:セカンダリバッテリー
・モデル名:BM25
・PSEマーク無し
・容量:2560mAh
・メーカー:Sunwoda Electric
・サイズ:縦90×横51×厚さ3.25mm
・重量:36g
メインディスプレイ
外周のベゼルは接着剤で固定。黒く塗装された樹脂成形品です。外す際はベゼルを折らないように注意しつつディスプレイに負荷を与えないようにしなければいけません。
薄くて細い大型部品にもかかわらず目立った変形が無く、高度な成形技術によって作られていると感じます。
ディスプレイの折り目部分はゴムパッキンで端面を保護。
ディスプレイと接する面にクッション。接触によるディスプレイへのダメージを軽減し、異物の侵入を防止しています。
バッテリーと同様に引っ張って剥がすタイプの両面テープで固定されています。
僅かに顔を出したタブを引っ張り出すことで剥がすことができますがテープが切れやすいため慎重に作業します。
ディスプレイは単体でバネ性があり静置状態では平面にはならず「ハ」の字になります。折るにも広げるにも結構な力が必要で、閉じ状態まで曲げてみると「本当に大丈夫なのか?」と心配になるほどの反力を感じます。
本体のヒンジにはバネ性が無いことから、端末を開く時のボヨンっとした反発はディスプレイのバネ性によるものでした。
裏面に板金を貼り付けて補強してあります。
折曲げ部分はすだれ状の補強板金で強度を保ちつつ柔軟性を持たせています。
補強板金を含めた厚さは0.65mm。ディスプレイ単体で曲げた時の最小Rは約5mm。
ヒンジ
2枚の黒い保護シートを剥がすとヒンジユニットが露出。
25本の大量のネジと両面テープで強固に固定されたヒンジユニット。本でいうところの背表紙にあたるバックプレートは金属製。2つの本体は2本のFPCで接続されています。
これですべてのネジを外し終え、その数なんと7種63本。一般的なスマホの3倍以上にもなります。
ヒンジユニットは総金属製。重さは22g。
開いた状態を維持するためのラッチが4カ所、開閉を制御するギアボックスが2か所。
2枚の羽がパタパタと動きます。
ギアボックス内には4つのギア。
ラッチは2つのねじりバネで開閉する凹形状が凸部分をくわえ込む仕組み。開いた時のコクッとした感触はこの嚙み合わせの瞬間に生じるものです。
ヒンジは複雑な動きをします。
4つのギアの働きにより開閉とともに羽の回転中心が移動し、羽の先端が真円軌道の外側に広がっていきます。
これによって開閉中のディスプレイの折り目は常に緩やかなRを保ち、どの角度において折り目がヒンジの割れ目に衝突しないようになっています。
そのため急激で高速な開閉動作でもディスプレイが安定して追従し折り目が乱れることはありません。
BtoB FPC
左右の本体を接続するBtoB FOC。
折りたたみ部を3層に分けて柔軟性をもたせることで開閉時の折曲げ負荷を軽減させています。
黄色いテープは「微気囊」(マイクロエアバッグ)と名付けられた折曲げ耐性をもった導熱シート。公式の発表によると20万回の開閉後でも導熱性能低下を3~5%に留める独自素材、とのこと。
Xiaomiは「蝶式散熱」という2つの本体を利用した放熱設計を施したとしています。
それがこの導熱シートを介して熱を分散する仕組みだとすると、基板上の僅かな面(5mm×8mm)にテープ留めされたこのシートだけでは2つの本体間の多量の熱の受け渡しを行えるようにはみえず、その放熱能力はあまり期待できるものではないのかもしれません。
メインフレーム
サブディスプレイのベゼルは樹脂製。接着剤で固定。
変形無く綺麗に成形されています。
メインフレームは金属をインサート成形したもの。肉厚で剛性感があり曲げやひねりの変形に高い耐性があります。
周囲には本体を閉じた状態に維持するためのネオジム磁石が9個埋め込まれています。
環境光センサー
センサーはメインディスプレイを剥がさないと交換ができない位置にあり、この部品が故障すると修理が大掛かりになってしまいます。
弱点
背表紙部分の隙間は特に注意が必要な部分。
ここから侵入した異物や水気がヒンジユニットとメインディスプレイの折り目に到達できる構造になっています。
異物の大きさ、入りどころによっては開閉動作に影響が出たりメインディスプレイの表示異常を引き起こす可能性があります。
ホコリっぽい所に置かない、砂や粉状のものの近くに置かない、濡れた手で触らないなど、一般的なスマホよりも気を遣う必要がありそうです。
分解完了
折り畳みの動作はよく考えられていて40万回の開閉試験にも耐えたというのも頷けます。
ただしそれは特定の試験環境下での話で、弱点であるヒンジ部分には異物が入りやすく繊細な製品という印象。
使用環境に気を遣う必要があり、何も考えずにガシガシ使えるような製品になるにはもう少し時間がかかりそう。
意外にも特殊な組み立ては見当たらず分解による再利用不可の部品の量も普通のスマホと変わりません。既存技術を使って生産することがコスト削減の工夫の一つと考えられます。
ディスプレイ、ヒンジ、カメラなどの固有の部品にコストを集中して他はいつも通り、というXiaomiが得意とする割り切りが折り畳みスマホの低価格化を実現したのではと感じるのでした。
ディスカッション
コメント一覧
今回も詳しく面白かったです!次回も期待が膨らみます!