【分解】バラしてみたら残念な品質だったaiwaのスマホ「SMP0601」

23/01/28

aiwaのスマホSMP0601を分解

aiwaブランド初のスマートフォンとして登場したSMP0601を分解します。
価格は17300円、5G非対応の格安SIMフリースマホに属する製品で、東京のJENESIS社が発売元となっています。

パッケージ

パッケージ

シュリンクフィルムで覆われた薄型タイプの個装箱。

後貼りされたラベル

フィルムの上には箱と異なる型番とJANコードのラベルが貼られています。
シュリンクすると型番が変わるのか、それとも何らかの理由で訂正する必要があったのか、どちらにしてもやっつけ感強め。

パッケージに含まれる同梱品

本体とアクセサリは袋詰め。
目立つ極太フォントのチラシがいかにもな雰囲気です。

付属品

付属品

SIM取り出しピン、マイク付きイヤホン、USB Type AtoCケーブル。

イヤホンの安全性の懸念

荒い造りのイヤホン

イヤホンで気になるのが耳に挿入するハウジングの金属調の鏡面仕上げ。
母材はプラスチックで表面に金属蒸着もしくはめっきを施しているように見え、傷が付いたり劣化によって剥がれ落ちたこれらの破片が耳の内部に入ってしまう懸念があります。
悪いことに表面処理をした後に成型時のランナーを切ってあるため、そこをきっかけに剥離が始まりやすくなっています。
マニュアルに使用材料の記載が無くどういった成分なのかが分からないこともあり、肌が敏感な方は念のため使用を控えた方が良いかもしれません。
中身もスカスカで、音響系ブランドのaiwaとしてこのイヤホンでよかったのでしょうか。

本体

本体の裏面と表面

背面はサラサラタッチのマット塗装仕上げ。

構成

表面と裏面のパネルの構成

ディスプレイはエッジ部分だけに小さなRが付いたフラットタイプ。保護フィルムは貼られていません。
背面は継ぎ目の無い一体型。段差を設けてパネルが貼られているように見せかけています。

ファンクション

各部の位置関係とカードトレイ

底面部にメインマイク、Type-Cコネクタ、スピーカー。天面部にイヤホンジャックがあります。
カードトレイは2枚のnanoSIMカードとSDカードを同時に使用できるトリプルスロット。

サイドキー

指紋認証非対応のサイドキー

プラスチック製のサイドキー。
電源キーは指紋センサーが内蔵されていそうな形状をしていますが指紋認証には非対応です。

キー周りの隙間とカードトレイの変形

キーの隙間と曲がったカードトレイ

キー外周の隙間と傾きが大きく、カードトレイは曲がってしまっています。

電源ON

ホーム画面とデバイス情報画面

見慣れないGoogle GoなどのアプリがAndroid Goの証。Androidバージョンは12。
ストレージは32GBでシステム占有分を除くと使用可能な領域は約25GB。
RAMは2GBであらゆる場面で操作のラグやもたつきを感じます。
ディスプレイ解像度は720✕1600ピクセルでぼやけ感があります。

通話品質

イヤースピーカーの開口部が狭いため通話の音質が悪い

高音が強くサ行の声が耳に刺さります。
また、イヤースピーカーの開口部が小さいため狙って耳に当てないと相手の声が遠くなってしまいます。
しっかり聞き取れる範囲が非常に狭くピンポイントで耳にフィットさせる必要があり、会話をしながらシビアな位置調整をしなければいけません。
ドコモとソフトバンクのVoLTEに対応し、SIMを挿せば設定不要で"HD"ピクトが表示されます。

サウンド

スピーカーは底面部に一つ

スピーカーは底面の1ヵ所のみ。
全体的にこもり感がある割に高音域だけは強く、低音がほとんどありません。キンキンして聴き疲れる音質です。

充電テスト

Anker PowerPort III nano 20Wで充電テスト

電池残量5%の状態から100%までにかかる充電時間は2時間53分とかなり遅め。50%まででも1時間かかります。
使用した充電器:Anker PowerPort III nano 20W

背面カバー

背面カバーの取り外し

分解は背面カバーの取り外しから。ツメで嵌っているだけのカバーは簡単に外すことができます。
広角カメラとフロントカメラ部分には防塵構造が無く、撮影に影響するゴミが侵入する可能性があります。
NFCは非対応。アンテナも搭載していません。

キートップ

サイドキーの構造

キートップは樹脂製。Volキーは熱溶着で、電源キーは嵌め込みで取付け。

カメラパネル

カメラパネルの下に3つ目のカメラの痕跡

カメラパネルの下にはモジュールの痕跡のようなものが隠されています。
両面テープがカメラの形にくり抜かれ、背面カバーにも元々あった穴を埋めた痕跡がみられました。
3眼カメラを搭載したモデルをベースにしていてaiwaモデルでは廃止されたか、開発中に3つ目のカメラが存在した可能性が示唆されます。
不自然に大きなカメラパネルはその名残によるものでした。

カメラ

カメラモジュールと放熱シート

メインカメラの隣には3つ目のカメラのためのスペースがあり、基板にはカメラ用コネクタのパターンも存在します。
基板の熱を拡散する放熱シートは銅とグラファイトの複層式。

バッテリー

タブを引っ張ってバッテリーを外す

黒い布テープを剥がした後、透明のタブを引っ張ってバッテリーを外します。

内蔵バッテリーの表面と裏面

・モデル名:PLG426584
・PSEマークあり
・容量:4000mAh
・メーカー:SHENZHEN AEROSPACE ELECTRONIC
・サイズ:縦84×横65×厚さ4.02mm
・重量:56g

バッテリーの安全性の懸念

バッテリーの接着面積が少ない

バッテリーは主に2本の両面テープで本体に固定されているのですが、接着面積が少ないためか簡単に剥がすことができてしまいました。
落下などの衝撃によって接着力を失ったバッテリーが本体内部で動いてしまうと電源系の不具合や発煙・発火等の事故を引き起こす要因の一つになると考えられるため、日頃の取り扱いには十分注意する必要がありそうです。

固定不足で安全性に懸念のあるバッテリー

試しに両面テープを剥がして布テープだけで固定してみるとバッテリーは縦方向、前後方向に自由に動ける状態。この布テープは特定の方向に柔軟性があり、対象物を一定の位置に保つという意味での"固定"にはあまり作用していません。
事実上バッテリーは僅かな接着面積の両面テープだけで固定されていることになります。
分解観察だけでは危険とは言い切れないものの、これまで見てきたスマホと比べると脆弱です。

メイン基板

基板を外すと指紋汚れで汚い

基板は放熱目的と思われる銅箔テープと接するように配置。グリス等の導熱材はありません。
テープも基板も指紋でかなり汚れています。素手で生産でもしているのかとJENESIS社のホームページを覗いてみたら工場の作業者と思しき人物が素手で製品を触っている写真がありました。

メイン基板の表面と裏面

シールドカバーは全てハンダで固定されていて外すことはできません。

イヤースピーカー

音質を悪化させそうな成型バリ

成型時のバリが音の通り道の一部を塞いでしまっています。通話時の音量低下、音質悪化への影響が懸念されます。

スピーカー

スピーカーの取り外し

サブ基板カバーを兼ねるスピーカーユニット。
ゴム製のガイド部品でマイクへ音を導きます。

密閉不足で音質が低下したスピーカーの中身

スピーカーボックスを開けてみると接着不足によって気密漏れが起きている箇所があり、この不良が音質を悪化させているのかもしれません。

ケーブルのつぶれとハンダ不良

組み立て不良のケーブルの潰れとツノハンダ

同軸ケーブルが正しい位置に通されていないため基板カバーに潰されて中の線が露出しています。
基板上のチップ部品にはツノハンダが出ており、これはすぐ近くのバイブモーターのハンダ付け作業時に起きたものだと思われます。

サブ基板

サブ基板の取り外し

動作音が大き過ぎるコイン型バイブモーターが接続されたサブ基板。

キースイッチ

サイドキースイッチの構造

金属板金ドームを貼り付けるタイプの旧式スイッチ。

ディスプレイ

簡単に取り外せるディスプレイ

ディスプレイは本体フレームにボンドで接着。接着力は強くなく簡単に剥がすことが可能。

ディスプレイの弱点エリアに水気やゴミが侵入しやすい構造

スピーカーとUSBコネクタの開口部は要注意箇所。水気やゴミがディスプレイの弱点エリアにすぐに到達できる構造になっています。

分解完了

全てのパーツを分解したaiwaのスマホ「SMP0601」

部品点数を少なく抑えた低コスト構成のスマートフォンです。シンプルな構造になることによる不良の低減も期待できます。
ですがそれは的確な品質管理や製造の能力があってこそのことであり、分解中に散見された不具合を見る限りではそういったコストコントロールによって生産されたものではないようです。

講評

スペック、動作、品質を総じて17300円という価格は割高で、ギリギリのスマホという印象。
絶妙にズレた企画と価格が製品によく表れています。
組立て時の不良、構造上の欠点、安全性の懸念は所謂"中国製の安物"を象徴するような内容で、設計製造の能力は推して知るべしといったところ。
近似価格帯のスマホには他にも選択肢があり、とりあえず使えれば良いという用途であってもこれを選ぶ理由は特段見当たらず、さらに割高となるとこの製品は一体何がしたいのだろうか、と存在そのものにまで疑問が及んでしまいます。
しかしながら価格も技術も競争が激し過ぎるスマホの世界においてオリジナル製品での新規参入は貴重な挑戦であり、今後の展開が気になります。

対照的にNothingのphone(1)は複雑難解な構造でありながら高い製造品質でコストも抑えた好例です。