【分析】防水って本当?「日本国内版 Redmi note 9S」を水没させて謎多き防水性能を評価。

20/07/06


この記事の検証は一度分解した端末の再組立て品で行っています。
止水性能を考慮した組立を行い、再利用不可部品は防水仕様の部材を用いて初期性能を再現を試みていますが正規状態ではありません。

特に一部のエリアにおいて正しく評価できていない箇所があります。


防水?非防水?と様々な憶測が飛び交うRedmi note 9Sの防水性能を評価します。
前回の分解で構造上の防水性能は大目に見積もってもIPX5以下と分析しました。
今回は実際に水に沈めて浸水経路や水没の程度を検証します。

防水規格

一言に防水と言ってもその性能は様々で、その性能を定量的に評価して数値化する防水規格が存在します。
防水性能の規格として最も耳にすることが多いのがIPX規格。
1~8までの数字で防水性能を表し、数字が大きいほど防水性が高くなっていきます。

P2i防水加工という独自のナノコーティングを施したこの端末がIPXのどのクラスにあたる性能を持つのかは明かされておらず、それでも防水という言葉が使われているために、IPX7相当のいわゆる防水対応端末だと思っているユーザーも少なくないと思われます。

水没テスト条件

バッテリーとカメラ、レシーバーを外した状態で試験します。
レシーバー部は分解時にテープを切断したためメッシュのみ貼り付けてあります。

レシーバー接着部を除く全ての開口部がクッションやパッキンで止水される設計で部品の破損無く再組立て可能な構造になっているため、止水能力の再現性を意識して慎重に組み立てを行いました。

背面ガラスを防水両面テープで接着し、カメラ部は外側から防水テープとPET板で塞ぎます。
元々カメラ周囲は両面テープで覆われていて止水性能が高いためここからの浸水は無いと仮定しての処置となります。

・水深:30cm (IPX7は1m)
・液体:常温の水道水
・放置時間:30分
上記条件にて水没させた後、分解して内部確認を行います。
30cmというと手のひらから肘までがすっぽり浸かるくらいのなかなか過酷な環境です。

スピーカーエリア

スピーカー付近のバッテリーエリアに水溜まりができています。
背面ガラスからの浸水は見られず、スピーカー周りの水没が疑われます。

サブフレームを外すと広範囲に渡る浸水を確認できました。
メイン基板側と異なり広くまんべんなく濡れています。

スピーカーエリアが水浸しに。
中央の穴から液晶側へも水が回っている可能性があります。

スピーカーユニット裏も広く濡れています。

フレームの開口部とスピーカーモジュールはロの字状のクッションを圧接しているだけのため、そこから漏れ出した水がスピーカーユニットとの隙間を伝ってバッテリーエリアまで回り込んだと思われます。
水量からして一気に大量の水が浸入したのではなく、ジンワリとゆっくり少しずつ染み出るような浸水であったようです。
ここはクッションの貼り付け位置がズレたり傾いたり、スピーカーの取り付けでねじれたりと、組み立ての精度によって止水性能にバラツキが起きる懸念があり、個体差が生まれやすい箇所です。

サブ基板エリア

基板、バイブモーターに目立った浸水があり、近傍の開口部であるイヤホンジャックからの浸水があったと推測します。

基板を外すとイヤホンジャックとUSBコネクタの間に水が残っています。

アンテナ端子にも大きな水溜まり。
基板の状態も考慮するとイヤホンジャックだけでなくすぐ脇のUSBコネクタからも浸水があった可能性があります。

メイン基板

今回はレシーバーを装着しておらず、メッシュシートのみを貼りつけた状態で試験したため正規状態では起きなかったと思われる浸水が起きてしまいました。
レシーバーが装着されていればレシーバー口からの浸水は無かったか、かなり軽減していたと思われます。
これを踏まえてメイン基板の解説は参考情報としてください。

バッテリーエリア内に僅かな水が確認できます。
背面ガラスからは浸水した痕跡が無いことからメイン基板側からの浸水があったと推測されます。

サブフレームを外すと基板の右半分に浸水がありました。
レシーバー口から入った水が基板とサブフレームの間を伝ってバッテリーエリアまで達した模様。

カードスロット実装面側は全く濡れていません。
その他の開口部にも浸水の痕跡は無く、レシーバー口以外からの浸水は無かったようです。
止水が甘いサイドキー、ゴムパッキンが破れているカード取り出しピンの挿入穴をかなり怪しんでいただけにここは意外な結果。

浸水経路とリスク

Bottom側はスピーカー穴とイヤホンジャックから浸水し、特にスピーカー穴からは多量の水の侵入を許しバッテリーエリアまで到達するという結果に。
基板もしっかり濡れており、USBコネクタ周りの水没は動作不良となる致命的なダメージを負う可能性があります。
また、バッテリーが水没した状態での使用は危険を伴う事故のリスクがあります。


正規状態の組立再現性が低く、特に正しく評価できていないエリアです。


Top側はレシーバー口から入った水が基板とサブフレームの間を時計回りに伝ってバッテリーエリアへ到達。
サイドキー、カードスロット、そして意外にもパッキンが破れていたカード取り出しピンの挿入穴からの浸水はありませんでした。
浸水があったのはレシーバーが装着されていなかったためだと考えられ、正規状態であればメイン基板側の浸水は一切無かったかもしれません。
メイン基板側の防水性は予想よりも高かったようです。

水没注意ポイント

最も浸水しやすく注意が必要なのはスピーカー穴。
スピーカー部には防水構造が無いため簡単に浸水してしまいます。
次いでイヤホンジャック、USBコネクタです。
イヤホンジャックとUSBコネクタにはゴムパッキンが付いていて一定の効果が見られるものの簡易的なもののため、今回のような水圧がかかる状況下では十分な止水効果を発揮できませんでした。

講評

分解時に予想していた通り、水圧のかかるような水没に対する防水性は無いという結果となりました。
日本において一般的に"防水"として認識されているであろうIPX7という閾値に今回の検証結果を照らすと「Redmi note 9Sは非防水」ということに。

ただしその浸水量は全くの非防水端末に比べれば少なく、誤って浴槽に落としてすぐに取り出すなどの瞬間的な水没であれば耐えられるのでは、と思わせる結果でもありました。
ボウルに貯めた水に沈めて正常動作を確認しているレビューがありますが、異常が起きないのは水深が浅いために水圧が低く浸水が軽微であるからと考えられます。
(僅かに侵入した水が移動して後に動作不良を引き起こす可能性はある)

したがってP2i防水加工という聞き慣れない加工が施されたこのモデルの防水性能は、分解による構造分析と水没検証の結果から「瞬間的な水没や水しぶきがかかったり濡れた手で操作する程度が許容されるレベル(強いてIPXでいうなら3~5相当?)」と推定されます。

しかし簡易的な防水性能でありながらも日常生活における不意の故障を低減させる程の性能であることは明らか。
この低価格のスマホにおいて更に簡易防水性能まで持たせてきたところがこのモデルの恐ろしいコスパをより確固たるものにしています。

過信はせずあくまで緊急用の防水性能と捉え、常用的に水に触れるような使用を避けることがこの素晴らしい端末を長く安定して使用するための秘訣となるでしょう。
そして水濡れ状態での充電は危険なので絶対にしないようにしましょう。