【分解】内部に謎の防水刻印。日本国内版「Xiaomi Redmi 9T」を分解検証。

21/02/19

Xiaomi Redmi 9Tを分解します。
税込17940円という低価格で投入されたSIMフリースマホの内部がどのようになっているのか検証します。

外装ケース

背面の外装ケースはツメで嵌っているだけで難なく開けることが可能。両面テープやボンドは使われていません。
止水構造も無く、この時点で非防水であることが分かります。

素材は塗装仕上げの樹脂製。
落としたり削れたりして塗装が剥がれても目立ちにくいように母材を同色にして長期使用に配慮されています。
平面部分には放熱シートとアンテナを貼り付け。5Gには非対応でアンテナの面積もさほど多くありません。

カメラの周囲には両面テープ。小さなゴミの侵入を防止します。

NFCアンテナの痕跡

意味深な開口部の奥に部品が実装できそうなところがあります。

背面ケース側の放熱シートの下にループアンテナの形状に似たダミー部品が貼り付けられています。
開口部の奥に見えた部分はアンテナ接点を実装する場所であったと思われ、更にRedmi 9Tのグローバル版はNFCが使用できることから、ここはNFCアンテナを設置するためのエリアであると推測できます。
日本向けモデルはFelicaを含めてNFCには非対応。ハードウェアレベルで機能を削除してあります。

サブフレーム

カメラパネルが一体になった樹脂製のサブフレーム。
イヤホンジャック部にはゴムパッキンが取り付けられています。

広角カメラレンズ周囲のクッションがちぎれてしまっています。
長期間の使用でレンズ内に埃が浸入してしまう可能性があります。

基板にはお決まりの指紋汚れ。
中華メーカー製スマホでは高確率で見られる事象です。

カメラパネル

パネルは両面テープで貼り付け。
レンズ部とパネル部が別体の珍しいレイアウト。

パネル周囲のリング部はフレームと一体の樹脂製。塗装仕上げです。

厚さ0.8mmの樹脂製。
ハードコート処理が施されているようですがガラスに比べれば格段に傷が付きやすく、特にマクロカメラ部は撮影に影響するため注意が必要。
防汚処理が弱く汚れが落ちにくいのも気になります。
ここはコストカットを図った感があります。

強い力をかけると裏面のミラー加工部に細かいヒビ割れが発生します。
このパネルを無傷で剥がすことは困難。

フラッシュLEDは一灯。
拡散レンズは樹脂製で、発光面以外が綺麗に遮光塗装されています。

未知のデバイス?

広角カメラ横にまたもや意味ありげな形状を発見。
大きくくり抜かれたイヤホンジャックのゴムパッキンの奥に基板が見えます。

対になるサブフレーム側にも同形状の空間が確保されていることから何らかの部品が実装できる空間とみて良さそう。
基板の実装面と周囲の形状からしてフラッシュLEDか撮影補助センサー系のデバイスと想像します。
類似モデルのため、もしくは特定地域向けの機能のためか、それとも試作段階で不採用となったのか不明ですが、撮影性能に影響する未知のデバイスの存在を示唆する痕跡です。

指紋センサー

センサーとプッシュスイッチが別体のタイプ。
センサー越しに奥のスイッチを押して電源キーのON/OFFを検出します。

バッテリー

バッテリーはオレンジ色のタブを引っ張って簡単に剥がすことが可能。

・モデル名:BN62
・PSEマークあり
・容量:6000mAh
・メーカー:Sunwoda Electronic
・サイズ:縦91×横64×厚さ5.4mm
・重量:77g

保護回路基板の実装部品は樹脂コーティングで保護されています。

フロントカメラ

フロントカメラはゴム製のカバーに守られるようにはめ込まれています。
Realme V5で見られた防反射加工等は無く標準的な造り。

メインカメラ

全てのカメラが独立。48MPカメラはレンズが前後に動く光学式オートフォーカス仕様。

メイン基板

基板の発熱は導熱グリスを介してディスプレイ側へ放熱。
銅箔シート等の放熱シート類はここにはありません。

CPUと電源IC部分には水色の導熱パッドが貼られ、カバー板金への放熱効率を向上。
さらに導熱グリスでディスプレイ側へと熱を逃がします。

カバー板金を貫くようにしてネジ留めする独特な基板。

謎の防水刻印

基板の隅に小さく「防水」という表記があります。
古い消防系の看板にありそうな、どことなく親しみを感じてしまうデザイン。

試しに水をかけてみました。
見た感じでは撥水しているようではなさそう。回路の露出部分も普通に導通するのでコーティングしてあるわけでもない様子。
基板のどこかに何かしらの防水加工が施してあるのかもしれません。
一体何が防水なのか、そしてなぜ刻印する必要があるのか謎が深まります。

レシーバー

レシーバーはスピーカーと兼用。ステレオスピーカー使用時はLch側のスピーカーとして動作します。
大型で開口部も大きく、いかにもパワーがありそうな見た目をしています。

一つのスピーカーから二つの音孔に分岐して音が出る構造。
それぞれの穴に対して専用のスピーカーがあるわけではないため音声通話中も両方の穴から音が出てしまい、天面側の穴から相手の声が周囲に音漏れする弊害を抱えています。
それでも音の広がりをもたらす優れたアイデアの構造であることには変わりありません。
端末を耳に当てて通話するという行為(かつ音漏れを気にしなければならない状況)よりもスピーカー利用時の体験を優先した方がより多くのユーザーに利する、と判断したと考えられ、ここにもXiaomiのバランシングの上手さがみてとれます。
また、天面に空いた穴は一ヵ所しか使われておらず、外装に空けられた穴の一つはデザインのためのダミー穴であることが分かりました。

外装ケースの内側を見ると薄くメッシュがかけられています。
ダミー穴もリアルさ重視のためか穴が貫通しています。

キー

1本にまとめられたキーFPC。

キートップは樹脂製。ここも塗装されています。

スピーカー

本体フレームと密着させてスピーカーボックスを作る構造。こちらはRchのスピーカーとして動作します。
スピーカー容積を大きくとることで音質を向上させています。
フレームとの接地面にはクッションを貼り付けて気密性を確保。

サブ基板

USBコネクタにはゴムパッキン。
イヤホンジャックと同様に止水効果を期待できるほどのものではなくホコリ等の異物の侵入を防ぐ程度のもの。
中華メーカーのスマホにおいては非防水でもここにパッキンを付けることが標準となっています。

USBコネクタとメインマイクを実装。スピーカー端子もあります。
同軸ケーブルによるアンテナの中継機能も兼ねています。

ディスプレイ

ディスプレイは外周を接着剤でフレームに固定。
下方には放熱シートを貼り付けてバックライトLEDの熱を拡散。

カメラ周辺は両面テープで接着。
近接センサー横には誤検知の原因となるLCDモジュールからの光漏れを防ぐための遮光シートが貼られています。

FPCの集約

メイン基板とサブ基板を接続する回路はLCDモジュールに付属する1本のFPCにまとめられています。
個別にFPCを用意する必要が無くなるためコストカットを狙ったものと考えられますが、ノイズに敏感なLCDの信号線に並列してUSBコネクタからの電源ラインを通すことになり信号に影響が生じるリスクがあります。
Xiaomiは独自の回路設計技術によりこの問題の解決に成功したようです。

メインフレーム

樹脂に板金をインサートしたメインフレームはたったの24gと軽量。
大容量電池の重量をここで吸収しています。
ディスプレイ側には大きな放熱シートが貼られ基板からの熱を拡散しています。

側面にはゲートと呼ばれる金型から樹脂を充填する入口が複数設けられています。
樹脂が細くなりがちなサイドシル部分も効率良く成型ができそうな配置です。

分解完了

分解してみると基板の防水マークや未知の部品の痕跡といった面白いものが見られ、値段の割に奥深いスマホだったという印象。

価格面では背面ケースをはじめとする安価な素材の採用、NFC部品の削除、FPCの集約による回路部品の削減といったあたりが構造上のコスト削減に寄与していそうです。

音孔を2つ設けたステレオスピーカーの構造も単純ながら工夫を感じるポイント。
こういったアイデアによって実用的な面白みを引き出し、低価格化において失われがちな満足感を上手く補っていると感じられるモデルでした。