【分解】中身も日本向けにカスタマイズされたソフトバンク版「Xiaomi Redmi Note 9T 5G」を分解。
Xiaomi Redmi note 9T 5Gを分解します。
Felica、5Gに対応しながら税込21600円という低価格を実現したスマホの内部がどのようになっているのか検証します。
外装ケース
背面の外装ケースはツメで嵌っているだけで簡単に開けることが可能。両面テープやボンドは使われていません。
ケースの素材は塗装仕上げの樹脂製。
落としたり削れたりして塗装が剥がれても目立ちにくいように母材を同色にして長期使用に配慮されています。
外周にクッションが貼られていてホコリや軽度な水の侵入の防止効果が期待できそうです。
カメラの周囲のみ両面テープで接着。
アンテナレイアウト
アンテナは外装ケースに集約。5Gのアンテナは4ヵ所に割り当てられ、4X4MIMOに対応。さらに状況に応じて出力を可変させることで安定した送受信を可能にする、としています。
Xiaomiはこの5Gのアンテナ配置を「360° シンメトリーアンテナレイアウト」と名付けています。
NFC/Felicaアンテナ
NFC/Felicaアンテナはカメラの左下の辺り、背面ケースに印刷されたFelicaマークの少し右側にあります。
グローバル版はカメラを囲むようにNFCアンテナを配置。
Felicaに対応するソフトバンク版は全く別物の専用アンテナを搭載していることになります。
アンテナ裏には基板の熱を拡散する放熱シート。
背面カバーにはアンテナを収めるためのくぼみが彫られており、背面ケースもソフトバンク向けのオリジナル部品が使われている可能性があります。
サブフレーム
カメラパネルが一体になった樹脂製のサブフレーム。
ディスプレイ、指紋センサー、バッテリーのコネクタは金属製のサポートで抜け止め処理されています。
カメラパネル
パネル部分はガラス製で両面テープで貼り付けられています。
パネル周囲のベゼルはピアノブラックに塗装された樹脂製です。
美しい輝きを生み出すテクスチャは裏面から貼られたシートによって実現しています。
ハイエンドモデルに採用される装飾技法を用いており、それなりにコストをかけた部材が使用されています。
ガラスの厚みは0.4mmとかなり薄いため破損には十分注意したいところ。
カメラリングは背面ケース側に貼り付けられています。
黒い部分と文字はケースに印刷されています。
このリングは樹脂製で非常に柔らかく、無傷で剥がすことは至難の業。
複雑で凝ったデザインのカメラ周りは精巧な部品で構成されていました。
メインカメラ
フレームにまとめられた3つのカメラ。
深度センサーカメラとマクロカメラのコネクタは金属製のサポートで抜け止め。
深度センサーカメラとマクロカメラの筒の部分にはゴム製のリングが被せられています。
フラッシュLEDは一灯。
裏面には導熱パッドが貼られ、発光時の発熱によるLEDへのダメージの軽減を図っています。
指紋センサー
センサー越しに奥のプッシュスイッチを押して電源キーのON/OFFを検出する構造。
フロントカメラ
フロントカメラは白いフレームを介して収まります。
1300万画素という高画素カメラでありながらたった7mm角しかありません。
メイン基板
珍しく導熱グリスや導熱パッド等の練り物系熱対策部品がありません。
替わりに基板に放熱シートが貼られています。
バネ接点をユニットタイプの接点に置き換えることにより、狭い所に多くの接点を設置することができます。
この基板ではサイドキーと近接センサー部分の2ヵ所に使用されていました。
銅箔テープの下にメモリとCPU(Dimensity 800U)。
それぞれ材質の異なる導熱パッドが貼られ、ディスプレイ側へ熱を逃がしています。
大きなカードスロットが実装面を圧迫し、なかなか高密度に部品が並んでいます。
日本では未発売のRedmi Note 9と基板を共用するための空き地が所々に見られます。
SIMカードスロット
カードスロット自体はグローバル版と同じトリプルスロットが実装されていますが、2枚目のSIMカード部分にはバネ接点がありません。
従ってグローバル版のデュアルSIM用カードトレイを使用してもSIMが認識されることはありません。
カードトレイを埋めただけでなく接点までをも撤去するという徹底ぶり。
基板にマーキングされた「JP4+64」の表記通り、メイン基板は日本専用のものとなります。
赤外線ブラスター
赤外線デバイスは受光部が無く照射(出力)専用。
近接/環境光センサー
近接/環境光センサーはディスプレイのベゼル裏部分に仕込まれています。
レシーバー/スピーカー
レシーバーはスピーカーと兼用。ステレオスピーカーとして動作します。
大型で開口部も大きく、いかにもパワーがありそうな見た目をしています。
ここには工夫が隠されており、一つのスピーカーから二つの音孔に分岐して音が出る構造になっています。
それぞれの穴に対して専用のスピーカーがあるわけではないため音声通話中も両方の穴から音が出てしまい、天面側の穴から相手の声が周囲に音漏れするのですが、それでも音の広がりをもたらす優れたアイデアの構造。
格安帯のモデルとは思えない豊かな音を体験することができます。
端末を耳に当てて通話するという行為(かつ音漏れを気にしなければならない状況)よりもスピーカー利用時の体験を優先した方がより多くのユーザーに利する、とXiaomiは判断したと考えられます。
サイドキー
キーFPCはメインフレームの側面に両面テープで固定。
はんだ部分は樹脂コーティングされ、汚れや水分の付着による劣化を軽減させます。
キートップは樹脂製で外側からはめ込み、ツメで引っかけて固定。
ケース側の中間部分にある豚鼻のような形状はキーの押し感をより明確にするための支柱として働き、キー周辺のフニャフニャ感を軽減させるためのものと思われます。
スピーカー
Bottom側のサブフレームを兼ねたスピーカー。
単独でBox形状となっていて個体差によるバラツキの少ない安定した音質が期待できます。
同軸ケーブル
Bottom側の2つの5Gアンテナに信号を伝送するため3本もの同軸ケーブルを使用しています。
短い2本のケーブルはフレームの溝にかなりきつめに嵌め込まれています。取り外し時には断線しないように注意が必要。
サブ基板
USBコネクタとイヤホンジャックにはゴムパッキン。
止水効果を期待できるほどのものではなく軽度の水気やホコリ等の侵入を防ぐ程度のもの。
バイブモーターはリニアアクチュエータータイプ。
スピーカー開口部横の5Gアンテナを中継するための極小の基板がこれまでのLTEモデルでは見られなかった特徴です。
USBコネクタとイヤホンジャックの間にあるメインマイクがなぜか板金によって保護されています。これもなかなか見られない構造。周囲を補強することで衝撃や基板の変形への耐性を高めているのかもしれません。
バッテリー
iPhoneで馴染み深い引っ張って剥がすタイプの両面テープで固定されています。
バッテリーに負担をかけずに簡単に取り外すことができます。
・モデル名:BM54
・PSEマークあり
・容量:5000mAh
・メーカー:Zhuhai CosMX Battery
・サイズ:縦88×横64×厚さ4.8mm
・重量:65g
これまでのモデル同様に保護回路基板の実装部品は樹脂コーティングで保護されています。
ディスプレイ
ディスプレイはボンドでフレームに固定。OLEDではなく液晶です。
LCDユニットの型番はRedmi Note 9と同じもの。90Hzに対応するデバイスかどうかは現時点では不明。
ガラスの厚さは0.7mm。公式の発表によると素材にはGorilla5ガラスを使用しています。
メインフレーム
ディスプレイ裏の板金と接続する接点が4ヵ所。
平面部には大きな放熱シートが貼られ基板からの熱を拡散しています。
分解完了
一部のハードウェアが日本向け専用に作られていて、グローバル版をそのまま持ってきてソフトでカスタマイズしただけではないということが分かりました。
グローバル版に比べてコストパフォーマンスが良くないとされるのには、こうしたローカライズにかかるコストが少なからず影響していると思われます。
Xiaomiがこのモデルに対して「今までやってきた特定の国に対するカスタマイズの中で最大のもの」と言っていることからもそれを伺い知ることができます。
モノを見れば2、3年前の同価格帯のスマホとは比べ物にならないほど造りが良く、低価格競争の中で着実に力をつけてきていると感じます。
ただ安く作るのではなく性能とコストの緻密なバランスを製品化する、というもしかするとハイエンドモデルを作るよりも難しいかもしれない芸当をもって生み出された製品です。
中華製格安端末を格安と一蹴できなくなる日がもう近くまで来ているかもしれません。
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