【分解】待望のテンキー付きロープロファイル静音メカニカルキーボード「Lofree FLOW 100 Keys」を分解。
2023年12月27日に発売されたロープロファイル静音メカニカルキーボード「Lofree FLOW 100 Keys」を分解。Lofree FLOWのテンキー付き版です。
滑らかな押し心地と独特のタイピングサウンドはPOM製スイッチとガスケットマウントだけでなく、構造全体で生み出されたものでした。
パッケージ
今回はLofreeの海外公式サイトからブラックを購入。
大きなダメージも無く注文から9日で到着しました。輸送梱包のダンボールはテープが今にも弾け飛びそうなほどパンパン。
同梱品
付属品はTypeA-C USBケーブル、説明書、保証書。キーキャップの取り外しツールは付属しません。
希少なテンキー付きキーボード
テンキー付きでロープロファイル、高い静音性を持ちデザイン性も高いメカニカルキーボードは選択肢が少なく希少です。キーキャップとスイッチを交換できるホットスワップにも対応。
CADや計算など数値入力を要する作業をしているユーザーにとっては待望の仕様でWindowsとMacで使用可能です。
無骨なアルミボディ
総アルミ製の金属ボディはソリッドで重厚感があります。重量は実測で●gでデスクの上ではドシッとして安定感があります。
重さのわりにはひねると捻じれやすいように感じます。不安になるほどではありませんが、重さと剛性の観点から気軽に持ち歩くものではなさそうです。
高さ
キートップまでの高さはUpper側で26mm、Lower側で18mm。ロープロファイルといえども極薄とまではいきません。
特徴的なデザイン
足とロゴプレートに施されたアクセントカラーがキャラクターを際立たせています。ネジもデザイン性の高いもの使用して細部にもこだわっています。部品の隙間などの造りは完璧とまではいきませんが、まずまずの出来といったところ。
ワイヤレス(Bluetooth)と有線(USB-C)を切り替えることができ、技適も取得済み。
RGBライト
背面の左右2か所にあるライトバーが演出用のRGBライトとして光ります。
色は8色から選択可能。光り方は消灯、常時点灯、ゆっくり点滅の3パターン。明るさの調整は不可。
キーバックライト
キーバックライトの色はホワイトのみ。光り方は消灯、点灯の2パターン。明るさは4段階。RGBライトとは別に設定できますが無操作で60秒経過すると全ての照明が自動消灯するのは共通。
文字は一部のキーを除いてほとんど見えません。ホワイトモデルであればキー全体をバックライトが透過して視認性が良いかもしれません。
キーキャップ
PBTを85%以上含有する白色成型樹脂に昇華印刷で着色したキーキャップ。天面、側面4面の計5面に染み込むように色が入っています。ダブルショットではありません。成型部の厚さは1.35mmあります。
手触りは良いのですが表面の硬度が低いのか擦り傷がやや付きやすいように感じます。
LEDはNorth Facing(北側)配置。ステムは上下左右の中央に位置しています。
スタビライザー
長いキーは傾きを防止するスタビライザーによりキーのどこを押しても均一の押し心地。可動部にはグリスアップされていて動きもスムーズです。
キーキャップとスイッチはしっかりと嵌っていて緩んだり傾いたりすることはありません。
スイッチが外しにくい
スイッチの嵌合が硬過ぎて汎用プラーでは外すことができませんでした。無理に外すと破損しそうです。
別売のLofree純正のプラーであれば外すことができましたがそれでもかなり硬く取り外し作業には注意を要します。
フレーム
14本のネジで固定されたフレームはアルミ削り出しで作られた継ぎ目の無い1枚物。平板を曲げた後に切削で形状を整えた部品で、キー部分が丸ごと切り落とされた贅沢なパーツです。歪み無く平面も出ています。
板厚は1.5~2.8mmあります。
ガスケットマウント
スイッチが付いているポジショニングプレートを8個のブロック状のガスケットと1枚の板状ガスケットで支え、フレームとボトムケースで挟むようにして保持。基板やプレートといった硬い部品がケースに触れないようにし、タイピングの振動をゴム製ガスケットで吸収するガスケットマウント構造になっています。
といってもガスケットは硬めでバネの様なプヨプヨした動きはありません。
接着剤が使われている
基板に接続されているコネクタ付近には残念ながら接着剤が使用されています。FPC、フォーム材などを巻き込んで接着されていて上手く分解しないと破損します。メンテナンス性は考慮されていません。
ボトムケース
アルミ板金のボトムケースは板厚約1mm。絶縁目的と思われる黒いシートの下にサブ基板とバッテリーがあります。
バッテリー
型番:OE919(リチウムイオン)
容量:3000mAh
サイズ:幅41×長さ110×厚さ4.7mm
重さ:48g
メーカー:Shenzhen Heng xun Energy Technology Co., Ltd.
バッテリーを納めるエリアには余裕があり、倍くらいのサイズのバッテリーを搭載することができそうです。
変形した基板ベース
サブ基板を支えるベースフレームは変形した状態で取り付けされていて、これに沿うように基板自体も曲がっていました。
また、ここに限らず両面テープは手でちぎったような切り口で少々雑な印象。
USB-Cコネクタには補強が無いのでできるだけ丁寧に扱いたいところです。
スタンド
1.5mm厚の金属板のスタンドは重い本体を支える十分な剛性があります。
固定ネジは締め付けが強過ぎるのか、ネジ山が潰れて半空転状態になっているものがありました。
反響抑制フォーム
厚さ3mmの高密度スポンジフォーム材で空洞を埋め、タイピング音の内部反響と基板の振動を抑制。
メイン基板
メイン基板はポジショニングプレートにネジで固定されています。
不思議なことに6個のネジ穴に対してネジは4本しかありません。残りの2本は欠品なのか意図したものなのかは不明です。
よく見るとスイッチの入れ替えの時に見える穴の断面をわざわざ紫色で着色してあります。基板断面から出るクズの発生を抑えるだけでなく、作業時の景観の向上にもこだわっているようです。
製造品質が良くない?
バックライトLEDが欠けています。近くのレジストが剥がれていたり傷もあるので製造中に何かを引っ掛けて欠いたものと思われます。
基板ベース、ネジの件も含めると製造品質はやや期待外れ。
ポジショニングプレートと基板の間には厚さ0.75mmのシリコン製ガスケットマット。プレートと基板のギャップを埋める役割も果たしています。
基板全面に厚さ0.5mmのフォーム材が貼られています。スイッチの底面が当たる位置にあり、キー押下時の衝撃と反響音の緩和に貢献していると思われます。
Kailh Full-POMスイッチ(Phantom)
簡単に外せるはずだったキースイッチは裏側からツメを丁寧に外すことでようやく分離できました。ツメの掛かりが深く、キースイッチプラーの抜去力では外すことが困難になっているようでした。
取り付け部の開口寸法は13.95×13.95mmの正方形です。
ボディ部分の厚さは5.3mm。ボトムハウジングの先端からステム先端までの全高は12mmです。
ハウジングとステムは自己潤滑性を持つPOM製で摺動部分にはグリスアップ済み。摩擦係数が小さく摩耗が極めて少ない素材とグリスの組み合わせで長期間安定した動作が期待できます。
バリや変形も無く大変綺麗に成型されています。各部で部品のガタつきを押さえる位置決め構造をとっており、精度を強く意識して設計されたことが伺えます。
ストロークはスコスコとしてとても滑らか。タクタイルのカクッと感は緩やかながら、押し初めの反発は強めに感じます。
伸縮中は耳を近付けなければ全くの無音ですが押し切りの着地時にカツッという硬く大きな音が出ます。
スプリングは外径3.4mm、自由長15.6mm、線径0.2mmのシングルストローク。
なお、本体カラーによってスイッチが異なり、ブラックではタクタイル(Phantom)、ホワイトではリニア(Ghost)が標準搭載されます。
別売の交換用スイッチ
交換用スイッチを別途購入すれば好みのキータイプに組み替えることができます。Lofree製スイッチプラーも付属。ただし100個入りでは販売されておらず全てのキーを交換しようとすると不足分の10個をさらに別途用意する必要があります。
ミリタリーグリーンのリニア(Ghost)スイッチの見た目もカッコよく、POM特有の滑らかさがクセの無い素直な押し心地を一層引き立てます。
タクタイルにもリニアにも共通して言えるこのスイッチならではの特徴は"柔らかさ"なのではないかと思います。素材自体の柔らかさが押し感にも表れていて、他のスイッチでは味わえない感覚が指先に伝わってきます。
POMスイッチ、侮れません。
構造全体で生み出す静音性
ゴム製のガスケットと柔らかいフォーム材で空間を埋める構造でキーボード全体から発生する音の低減を図っていて、実際に空洞感の少ないまとまりのある柔らかい作動音が出ているように感じます。
しかしデスク天板に空洞があったり薄かったりすると結構バコバコ音が出ます。これはキーを押し切って底面に衝突する際の衝撃が伝わって発生する音で、硬めのゴムで作られたガスケットがこの衝撃を吸収しきれていないためのようです。大判のマウスパッドを敷くとかなり軽減されるので併せて使用することを推奨。高い静音性能を堪能することができます。
分解完了
衝撃・振動・反響を制御するための構造と素材がよく考えられていて、この製品ならではの音質、押し心地を体験することができます。
しかし部品の精度と製造品質には甘いところがあり、その結果全体としても造りを詰め切れていない感じが出てしまっているのが悔やまれます。2万円超えの製品にしてはちょっと安っぽい?と感じるかもしれません。
それでもテンキー付き、ロープロファイル、静音、メカニカルでホットスワップ対応という希少な企画は今のところ他に選択肢が無いとも思わせるほどの構成であることは間違いなく、噂に違わぬ魅力的な製品となっています。
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