【分解】いいところを突いてきた「moto g53y 5G」を分解して知るモトローラのスマホの品質。

23/07/26

moto g53yを全て分解した状態

moto g53jのワイモバイル版として税込21995円で2023年6月29日に発売されたモトローラ「moto g53y 5G」を分解します。

背面パネル

背面パネルを外した状態

両面テープで固定された背面パネルは厄介な糊残りも無く綺麗に剥がすことができます。

背面パネルの反り

パネルは厚さ0.55mmのプラスチック製でなかなか強めに反っています。
背面がすっきりした平面に見えなかったのはこの反りが影響していそうです。

背面のパチパチ音の原因

音声有り 3MB

カメラ横を押した時に鳴っていたパチパチ音。

異音を発する両面テープ

音の発生源は背面パネルに貼り付けられた小さな両面テープでした。
この両面テープは本体側の接着面との相性が悪いのか貼りつきがよくありません。
ここに背面パネルの反りと組み立てで生じるパネルの歪みが両面テープを剥がそうとする力として作用し、パチっと音をたてて剥がれる、というわけです。
このテープはパネルの反りを抑制するためのものと考えられますが、接着方法が適切ではないかもしれません。
薄くて柔らかく、反りの強いパネルの扱いには設計も頭を悩ませていたのではないかと想像します。

カメラパネル

カメラパネルを外した状態

アルミ削り出しのカメラパネルを剥がすと、カメラ周りのリング部分はプラスチック製ケースの一部であることが分かります。

中間フレーム

中間フレームを外した状態

側面部分の外装を兼ねる中間フレームを外すと基板が露出します。
基板カバーを省略することでコストを抑えることができて構造も単純になることから、安価なスマホでよく採用される構成です。
本体サイズを小さくするために肉薄に作られたフレームには所々に補強が入っていて強度を考慮したことが伺えます。 

防塵構造

内側に一周貼られたクッション材で部品間の隙間を埋めて異物などの侵入を簡易的に防ぎます。
マイクやスピーカー等の開口部も隙間を埋める簡易的な防塵構造がとられていました。

指紋センサー、ボリュームキー

指紋センサーとボリュームキーを外した状態

プラスチック製で塗装仕上げのキーは成型、塗装共に目立った問題はありません。

アンテナが多い

アンテナの位置

中間フレームに張り巡らされたシート状のアンテナは面積の広さもさることながら基板との接点の数は20個にもなります。
Felica/NFCのアンテナはカメラ横にあります。
対応バンドは下記の通りでソフトバンク系以外の周波数もカバーしています。

5Gn3、n28、n77、n78
4G1、2、3、4、8、11、12、17、18、19、26、28、38、41、42
3G1、2、4、5、8
GSM850MHz、900MHz、1800MHz、1900MHz
Y!mobaile公式ページより

カメラカバー、フラッシュライト

カメラガラスとフラッシュライト

カメラカバーは防汚処理と防反射加工が施された薄板のガラス製。
フラッシュライトは1灯で裏面には導熱グリスが塗布されています。

メイン基板

基板を外した状態

基板の熱をメインフレームへ逃がす導熱グリスを複数個所に塗布し、CPU以外の熱源の放熱も強化しています。
銅箔テープと熱拡散シートも併用して手厚く熱対策されています。

メイン基板の表面と裏面

小さなチップ部品が綺麗にマウントされていて感心していたら一ヵ所怪しい所がありました。
チップが片浮き気味でパッド面は焦げたフラックスが付着したような茶褐色になっています。導通はしているので今のところ機能に影響はありません。

カメラモジュール

3つのカメラモジュール

・メイン:SAMSUNG S5KJN1 5000万画素
・マクロ:OmniVision OV02B10 200万画素
・フロント:SAMSUNG S5K4H7 800万画素

イヤースピーカー

イヤースピーカー

デュアルスピーカーの片側チャンネルを担うイヤースピーカー。少し大きめのモジュールを使用しています。
余裕をもった音で安定感のある音質だったのはこのモジュールのサイズも効いていたようです。

キースイッチ

キースイッチFPC

スイッチ部分は防塵処置エリア外で水分や異物が入り込みやすい場所にあります。接点部分の保護も詰めが甘いところがみられるため、キー周りは注意して使用した方がよさそうです。

サブ基板、スピーカー、バイブモーター

サブ基板とスピーカーとバイブモーター

イヤースピーカーより一回り大きなスピーカーには導熱グリスを塗布して発熱対策。イヤースピーカーを大きめにしたり放熱に気を遣っていたりとやはり音作りには力を入れているようで、なかなか良い音質だったことも頷ける構造になっていました。
イヤホンジャックとType-Cコネクタはゴム製パッキンで防塵効果を高めています。
バイブモーターはコイン形状のシリンダータイプ。キレが悪く、ギュイーンと煩い音が出るのでここは安っぽさが否めません。

バッテリー

バッテリーを外した状態

バッテリーを固定する両面テープは強力で容易に外すことはできません。修理用に剥がせる構造にもなっておらず、バッテリー交換のことは考慮されていないようです。

バッテリーの表面と裏面

よく見るとタイ向けの認証番号の下に「Lenovo(Thailand)Limited」の文字があり、アメリカ企業のモトローラが中国企業Lenovoの子会社であることを再認識させられます。
・モデル名:NH50…E32、G22と共通?
・PSEマークあり
・容量:5000mAh
・メーカー:ATL
・サイズ:縦91×幅65×厚さ4.4mm
・重量:65g

BtoB FPC、同軸ケーブル

BtoB FPCと同軸ケーブル

BtoB FPCはイヤホンジャックとメイン基板を繋ぐ専用のケーブル。
2本の同軸ケーブルには大きなダメージも無く綺麗に収まっていました。

メインフレーム、ディスプレイ

ディスプレイを外した状態

フレームとディスプレイは接着剤で固定されています。
メインフレームはガラス繊維入りポリカーボネート樹脂とアルミ合金の一体成型品。
ディスプレイのFPCはメイン基板とサブ基板を繋ぐBtoBケーブルを兼用していて部品の削減に貢献しています。

分解完了

moto g53yを全て分解した状態

難しいことはせず部品数を減らしてコストを抑える構造でありながら、積極的な放熱、防塵構造といった使い心地と耐久性を意識している様子が印象的でした。製造品質もまずまず。
価格と品質のバランスをよく考えて進められたプロジェクトなのだろうと感じます。

しかし背面の異音やスッキリしない平面度など中途半端な造りも目につきました。
細かいことを言えば塗装の美しさや部品の仕上がりなど視覚的な印象を決める部分ももう一息。
製造のばらつきが出やすい設計になっていることも伴って、良いものなのにどうもカチッとしないな、という感覚を抱きます。
その辺りの作り込みはXiaomiやOPPOが圧倒的で、内部の精度も相当な差があると改めて思うところです。

それでもこの価格を思えば強い不満になるようなものではありません。
性能も価格も横並びな製品が多い低コストスマホの中で、他社製品には無い快適なスペックを堪能できる満足の方が勝るのではないでしょうか。

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