【分解】薄さと軽さへの執念が生んだ日本国内版Xiaomi「Mi 11 Lite 5G」の内部を覗く。

日本国内版Xiaomi「Mi 11 Lite 5G」を分解します。
メイン使いに十分なスペックを持ちつつ薄くて軽いスマホの内部がどのようになっているのか見ていきます。

背面ガラス

背面のパネルはガラス製。両面テープで貼り付けられています。
継ぎ目は無くゴミや水の入る隙間はありません。

外周が僅かにラウンドしたフラットガラス。表面はサラサラタッチのすりガラス仕上げ。
透明のガラスの裏面に色のついたシートを貼り付けてあります。ガラスは各色共通で色違いのシートによってカラーバリエーションを作っています。
シート込みで厚さが0.68mmなのでガラスの厚さは0.55〜0.6mmと推測されます。

NFC/Felicaアンテナ

NFC/Felicaアンテナはカメラの右下の辺り。背面ガラスに印刷されたFelicaマークの少し左下にあります。
海外版とほぼ同じ位置にありますが形は別物。「日本版」の文字通り日本向けに設計されたオリジナルのアンテナです。

カメラパネル

カメラパネルは背面ガラス側に固定。
ガラスを剥がすと同時にカメラモジュールが露出するため、分解時は接触やゴミの付着に注意が必要。

カメラモジュールを保護するクッションの一部が欠けています。ここからゴミが侵入して撮影に影響する懸念があります。
生産工程での見落としなのか良品判定されたものなのかは分かりません。

ベースフレームのフランジ部分を背面パネルの裏から両面テープで固定。
そこにパネル類を貼り付ける構造。
接着は全て両面テープ。どれも接着力が高くここもゴミや水分の侵入は無さそう。

ベースフレーム:金属製
メインカメラパネル:厚さ0.5mm ガラス製
マクロカメラパネル:厚さ0.4mm ガラス製
装飾パネル:厚さ1.25mm 樹脂製
樹脂製の装飾パネル部を傷付きから守る専用の保護シートが販売されています。

フラッシュLEDのレンズは成形品ではなくシートで作られています。
これによりパネルの出っ張りを抑えています。

基板カバー

Felicaアンテナの下に隠れたネジを外します。
渋みが漂う明朝体の文字で「下にネジがあります」と親切な表示。

と油断させておいて両面テープの下にもネジが隠れています。

板金がインサート成型された基板カバー。
板金部分に大型の熱拡散シートが貼り付けられています。

メインカメラ

メインカメラのイメージセンサーはSAMSUNG GW3 6400万画素 1/1.97インチ。
広角カメラはSONY IMX355 800万画素 1/4インチ、マクロカメラはSAMSUNG 5E9(YX04) 500万画素 1/5インチ。

メインカメラと広角カメラの間に嵌め込まれた一際目立つ赤いゴム製の部品。

これは2つのカメラの位置を固定するための部品と考えられます。
ゴムの弾力を利用して反対側の壁に押し当てることでカメラ位置のバラつきを抑制すると同時に、組み立て中にカメラが浮いてしまうことを防ぎます。
また、両面テープによる固定をこの方式に置き換えることでテープが不要になり、カメラの出っ張りを0.05mm〜0.1mm程度軽減する効果もあるようです。

フラッシュLED + 背面照度センサー

フラッシュLEDは一灯。
背面の照度センサーは周囲の環境をより正確に把握するためのサブセンサーの役割を果たします。

フロントカメラ

2000万画素のフロントカメラ。レンズ先端の直径はたったの1.9mm。
これだけ細ければパンチホールをもう少し小さくできたのでは、と思ってしまいます。
イメージセンサーはSAMSUNG 3T2 1/3.4インチ。

メイン基板

導熱グリスで基板の熱を本体へ放熱。

銅箔テープの下もグリスが塗布されています。メモリには塗布されていません。

基板の実装面積が狭い上に多数のアンテナ接点とコネクタによってなかなかの高密度実装となっています。
シールドは全てはんだで固定されていて開けることはできません。

近接 / 環境光センサー

フロント面の環境光センサーはレシーバーの右下にあります。
OLEDの透過特性を利用して画面越しに測光しています。

レシーバー/バイブ

カメラに追いやられるようにして縦置きになったレシーバーはスピーカーと兼用。ステレオスピーカーの片側チャンネルとして動作します。
バイブモーターは珍しいTop側の配置。

SIMカードスロット

カードスロットは長いFPCに接続され独立しています。

カード取り出しピンを差し込む穴にはゴムパッキン付きの軸が差し込まれています。完全防水モデルで用いられる構造です。
近傍にディスプレイのコネクタがあるため止水と防塵に配慮する必要があったのだと思われます。
カードスロット付近の水濡れには特に注意する必要があるということになります。

スピーカー

エンクロージャータイプのスピーカー。
開口部周囲は接着されていないため外装の穴から浸水します。ここも浸水の要注意ポイント。

サブ基板

USBコネクタとマイク穴周囲にはゴムパッキン。
スピーカー開口部横の縦長アンテナ中継基板は最近の5Gモデルでは定番となってきました。

カードスロットが別体となったことでサブ基板は極小サイズに。

同軸ケーブル

Bottom側のアンテナに信号を伝送するための同軸ケーブルは2本。

ケーブルを壁にめり込ませて配線。こんなところを通さないといけないほどスペースに余裕がありません。

バッテリー

バッテリーはオレンジ色のタブを引っ張ることで簡単に外すことができます。
薬品や特別な工具は必要ありません。

半透明のフィルムを介して3枚の黒い両面テープでフレームに接着されていました。

・モデル名:BP42
・PSEマークあり
・容量:4250mAh
・メーカー:Sunwoda Electric
・サイズ:縦86×横63.7×厚さ4.15mm
・重量:56g

ボリュームキー

キーFPCはメインフレームの側面に両面テープで固定。
はんだ部分は樹脂コーティングされ、汚れや水分の付着による劣化を軽減させます。
キートップは外から差し込むタイプ。さらに黒いゴム製カバーで蓋をします。

指紋センサー

キートップを外側から滑り込ませ、板金を差し込んで抜け留めします。
赤いゴム製のパッドはスイッチの押し子になります。

電源キーのスイッチがキートップ側にあります。ほとんどの場合はフレーム側に固定されたスイッチをキートップで押す構造をとりますが、このモデルはスイッチが可動側にあります。

赤外線レンズ

赤外光を導光するレンズは内側から両面テープで固定。
軸の先端が外装の形状に合った形状のため装着方向に注意。

BtoB FPC

メイン基板とサブ基板を接続するFPCとLCDを接続するFPC。

ディスプレイ

ディスプレイは接着剤でメインフレームに固定。天面部周辺のみ両面テープで追加補強されています。
ガラスの厚さは0.6mm。公式の発表によると素材にはGorilla6ガラスを使用しています。

耳当て部分の開口はOLEDへダイレクトに繋がっているためOLEDの一部エリアをボンドで保護してあります。
この保護エリアを超えて水等が侵入するとOLEDを侵してしまいます。
耳当て開口部は浸水に特に注意したいポイントです。

ガラスの緑色斜線部とメインフレームの赤色斜線部を貼り合わせます。

接着剤の幅は僅か0.4mmほど。高度な制御によって接着されていることが伺えます。
たったこれだけの接着幅でもガラスは強力に接着されていて簡単に剥がすことはできません。

メインフレーム

骨格にあたる金属部分はマグネシウム系の合金と思われます。曲げたりひねってみたりしても剛性感があり脆弱な感触はありません。
手に触れる周囲の部分は全て樹脂で覆われていてピカピカの仕上げは金属蒸着と塗装によるもの。
樹脂部分が本体色と同じ色で成型されていることからこの部品は色別に用意されていると予想できます。
中央に見える黄土色のプレートはヒートパイプ。CPUを効率良く冷却します。

アンテナレイアウト

メインフレームの金属部分を主なアンテナとして使用しています。
基板カバーとBottomスピーカーにもアンテナがあり、特にサブフレームは海外版とアンテナパターンが異なることを確認済み。メインフレームのアンテナも樹脂の内部にあってパターンを目視できないため修理用部品の選定には注意が必要。
通販で買った部品に交換したら感度がおかしくなった、なんてことが起こりえます。

薄さの理由

わざわざ長いFPCを使って独立しているカードスロットに薄さの理由が隠されています。
右は比較用の一般的な基板。同じ2階建てのカードスロットを備えるサブ基板一体タイプのものです。

基板一体タイプでは単純に表裏で最も背の高い実装部品の高さ、ここではマイクとカードスロットの高さが総厚になります。
ところが独立したカードスロットは基板の制約を受けずに自由な位置に設置できるため、Type-Cコネクタの厚みの中にカードスロットをすっぽりと収めることができるのです。
これによりカードスロットの厚さを完全に無視できることになり、最大で0.62mmもの厚みを削減することを可能にしています。

続いてディスプレイ。
このディスプレイはガラス単体で0.6mm、総厚でも1.16mmしかなく、ガラス基板を使わないOLEDモジュールの採用により総重量はわずか27g。
以前分解したVIVO S9のディスプレイに比べて0.5mm薄く、10g軽量です。
この薄いガラスに軽量OLEDを組み合わせたディスプレイが薄さと軽さに最も貢献した部品であるようです。

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